ピーター・ハウレット代表から
風力発電と野鳥保護 〜

毎日新聞 2006年12月23日(土曜日) 主張 提言 討論の広場 

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論点   風力発電と野鳥保護

ピーター・ハウレット 南北海道自然エネルギープロジェクト代表。北海道地球温暖化防止活動推進員。

1955年札幌市生まれ。カナダ・グエルフ大卒。函館ラ・サール中学・高校英語専任講師。風力発電の推進や童話・アイヌ民話の英訳などに取り組んでいる。

 

風車が鳥たちを守る

*窓や車に比べ風車に当たる鳥はわずか

*風力発電は地球温暖化対策の最良の選択肢

 かつてカナリアは鉱山で危険を警告した。今の地球環境では白化したサンゴや氷を失いつつあるシロクマなどがその役割を担わされている。11月に発表された世界自然保護基金の「鳥と気候変動グローバル白書」によると、渡り鳥が、春が終わりかけたヨーロッパに渡ってきて子育てに失敗するなど気候変動が鳥にも深刻な影響を与えている。渡り鳥も「カナリア」だ。

 今、日本では別の「鳥が死んだ」話が新聞に載る。「風力発電に逆風 エコのはずが・・・野鳥衝突や景観論争」といった見出しは大半の読者に風車の下の鳥たちの死骸の山をイメージさせるだろう。しかし、そんなにも鳥が打ち落とされているのだろうか。「市民風車を建てて地球温暖化をとめよう!」と2000年から勉強会、キャンドルナイト、家庭での省エネ作戦、小型風車設置などの活動をしている私たち「南北海道自然エネルギープロジェクト」にとって、鳥と風車の問題は人ごとではない。近い将来、道南で風車を回すためNPO法人北海道グリーンファンドと適地探しに着手している。

 米国の年間平均バードストライク数は大型風車一基に2.19羽(2001年、風車数約1万5千)、ドイツは同0.5羽だ(全てキツネなどによる死骸持ち去り数調整込み)。米国の人間活動による「バードストライク」総数は約10億羽で、その半分以上は窓ガラス、続いて車両、高圧線、猫、通 信タワーと続き、風車はわずか0.01%だ。

 風車は実は鳥を救う道具でもある。火力発電所の大気汚染で死ぬ 鳥の数を減らすからだ。さらに石油タンカー事故による石油流出の可能性も減らす。記憶に残る事故で1997年の日本海のナホトカ号では1300羽以上が、そして1989年のアラスカでの石油タンカー、エクソン・バルディーズ号では50万羽が犠牲になった。

 日本の風力産業には法に基づく環境影響評価の義務はない。風車が鳥に悪いのではなく、鳥や環境への十分な配慮が無い建設プロセスが問題なのだ。一方、風力に否定的な鳥愛好家たちは、地球温暖化対策の対案を示すべきだ。

 風力産業、鳥愛好団体及び環境省が海外の大量 の資料を分析・選択し日本語に翻訳することを提案したい。そして環境影響評価の義務付け、同じ3者に

よる風車設置ガイドラインの作成と詳細な適地探しのマップ作りが必要だ。

 最低でも欧州風力エネルギー協会が主張する、2020年までに全世界の電力の12%を風力でまかなう計画に沿った数値目標が日本に求められる。私たちは地球温暖化対策のベストカードである風力発電を、鳥に最小限の影響しか与えないように推し進め、スローな社会を“ファーストに(急いで)”作らなくてはならない。

 北極の氷が2040年には無くなってしまうという衝撃的なニュースが今月発表された。けんかをしている時間はもうない。シロクマや渡り鳥が「現代のカナりア」として危険を教えてくれている今、直ちに行動を開始しなければならない。

他の出題者

古南幸弘 日本野鳥の会自然保護室長

種の存続への影響も

*衝突を防ぐ風車デザインはまだない

*計画段階で公的機関が影響評価実施を

関和市 日本風力エネルギー協会会長

野鳥保護と両立図れ

*鳥への悪影響は事業者の本意ではない

*設置場所の慎重な選定で衝突の回避を